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NODA・MAP「贋作・罪と罰」@シアターコクーン

ninico2006-01-22

ドストエフスキーの「罪と罰」の舞台を幕末の日本に置き換えたお話。「理想のために人は人を殺せるのか」。
ぴあからひっぱってきたあらすじはこんな感じ

ときは幕末、場所は江戸。日本初の女性官僚になるためだけに生きてきた三条英(松たか子)は、「優れた人間は、既存の法律や道徳に縛られなくてよい」とのエリート意識から殺人を実行する。しかし予定外の被害者まで出し、罪悪感と逮捕の恐怖に苦しむことに。彼女の異変に気づいた同じ塾生の才谷(古田新太)は心配するが、彼にも大きな秘密があった。そして、英のもとに婚約した妹と母が訪ねてくるが、妹の婚約者・溜水(宇梶剛士)は数々の黒い噂を持つ男。死んだと聞かされていた英の父が現れ、溜水が才谷に近づき、江戸崩壊の足音が聞こえ始める頃、英の後悔もピークに達して……

野田作品を生舞台で見たのははじめてです。流れるような舞台転換が圧倒的に美しくて感激。暗転なしでどんどん繋がったまま場面がかわっていくのが圧巻でした。テレビで見ているとどこかしらが切れてしまうもんね。ステージが会場の真ん中あたりに作られていて、360度を客席が囲んでいる形。セットはなく椅子や柱、布など小道具で場面転換してました。テレビで見た印象からコクーンはずいぶんと大きな劇場という印象があったので、後列だと見づらいかと不安だったけど、この舞台設置のおかげでずいぶん見やすかった。全体をちょうど見渡せるくらいの高さで、1つの舞台上で2つの場面が交差して動くような演出が多くあったのでかえって至近距離よりよかった。

松たか子がとても凛としていてきれいでした。「人間はすべて凡人と非凡人との二つの範疇に分かたれ、非凡人はその行動によって歴史に新しい時代をもたらす。そして、それによって人類の幸福に貢献するのだから、既成の道徳法律を踏み越える権利がある。」…英の強盗殺人がここまで確固たる思想のもとに行われたように見えない…と最初思ったりしたけど、その後の葛藤の演技が真に迫っていて、松たか子すごいと思った。
マギーと小松さんコンビのコミカルなシーンがたのしい。久しぶりに舞台で見たマギさんは声の出方とかが以前と何か変わっててすごく舞台映えしていたと思う。野田さんの動きがすばらしくすばしこいことにも改めて驚いた。あそこまでアグレッシブな中年あんまりいない。すごい。
英が才谷に、私の彼方で生きていろ、彼の居る方角と書いて彼方と呼ぶから、お前がいる所がいつだって私の彼方になる、と話すシーンが強烈に印象的でした。いいせりふだったなあ。他にも「世界が音を立てて崩れていくなんていうけれど嘘だ。世界が崩れるときは音の方が先に崩れていく」とか、耳に残るどきっとする台詞がたくさんありました。重いけれど素敵な芝居でした。